
松本民芸家具のイスのレパートリーの中でも人気のある、#508型ウィンザーチェアです。ウィンザーチェアの中では、このイスのように背中が角張っているタイプのものを、”コームバック”型と分類されます。「コーム(comb)」つまり”櫛”に見立ててそのように呼ばれるそうです。
このイスの特長の一つに、背中の傾斜が緩い、つまり背中が立っていることが挙げられます。イスの背中までの高さ92㎝に対して、奥行が52㎝。アームチェアとしては結構コンパクトなイスですから、意外と場所を選ばずに置けます。そして実際に座ってみると背中がスッと伸びる感じで姿勢よく座れますし、立ち上がるのにも楽。
肘を支える「束」と呼ぶ部品が大きく曲がっていて、これによってコンパクトなイスの割に座った時の体の自由度が大幅に向上します。
実はこの#508型ウィンザーチェアの形そのものは18世紀には既にあったもの。日本のウィンザーチェアづくりを目指した松本民芸家具が、各国の民芸家具をお手本にするなかで、「ゴールドスミスチェア」や「キャプテンクックチェア」と呼ばれるイスを模したものです。見た目の美しさ、座り心地の良さ、そしてそれがコンパクトサイズに実にうまくまとめられている。300年も前にこのようなイスがすでに作られていたことに驚きを感じますし、民芸家具の底流に流れている”力強さ”に圧倒されますね。